愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
「匂いから察するに……蜂蜜、シナモン、クローブ、カルダモン……ナツメグに松の実、オレンジに麝香……媚薬のレシピか。相手に飲ませることで、夢中にさせることができる」

「びやくぅ⁉︎」

 素っ頓狂な声を上げるペリウィンクルの口を、ヴィアベルは慌てて塞ぐ。
 
「静かにしろ。気づかれるではないか」

「だって、媚薬って……」

 モゴモゴとペリウィンクルが反論する。
 そんな彼女にヴィアベルは「静かに」と注意したが、遅かったらしい。
 こんな夜更けに、人目を憚るようなことをしている人物だ。物音に敏感になっているのは当然である。
 案の定、少女はペリウィンクルの声にピクリと肩を揺らし、完成した媚薬をギュッと胸に抱いて周囲を警戒し始めた。

「ああ、ほら。気づかれた。気配を消す魔法をかけておくから、とりあえず黙っていろ」

 ペリウィンクルが頷いたのを見て、ヴィアベルは気配を消す魔法を自身とペリウィンクルへかけた。
 程なく、足音が近づいてくる。
 パタパタと走る足音が遠のいていくのを聞きながら、二人はしばしじっと身を寄せ合っていた。
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