愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
 舐めてみたら甘いのかな、なんて馬鹿な考えがよぎる。
 鼻と鼻がくっつきそうなくらいの距離で、二人は見つめ合った。
 漂う空気に、緊張感が滲む。

 綱渡りをしているみたいだ。
 一度バランスを崩せば、もう元には戻らない。

(そんなの、嫌)

 ペリウィンクルは小さな鼻に皺を寄せた。
 なんだかよくわからないが、湧き上がる感情の捌け口をヴィアベルへ求めたくなる。

(なんでこんなに近いの? これじゃあまるで……)

(まるで……)

(……唇も甘いのかしら)
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