愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
 ヴィアベルが付加魔法をかけたペリウィンクルお手製のハーブティーを飲んだトゥルシーは、永い眠りから目を覚ました姫のようにゆっくりとまぶたを開き、まっすぐにディルを見た。

『ようやく僕を見たな?』

 そう言ったディルは、口元こそ笑っていたが、目が据わっていた。
 ペリウィンクルはそんな彼を怖いと思ったが、トゥルシーは違ったらしい。
 魅入られたように見つめる彼女に、ペリウィンクルは心の中で「え、あれにときめくの?」と引いた。

(とはいえ、あれはあれで幸せそうだし、ディルルートのヒロインエンドは回避できた。ローズマリーお嬢様からしてみたら、思惑通りってところなのかな)

 最近は悪役令嬢の恋を応援することに重きが置かれていて忘れそうになるが、ローズマリーの目標はソレルに婚約破棄されることなのだ。
 セリ、サントリナ、トゥルシーとそれぞれがエンディングを迎えた今、ラストに残るはローズマリーである。

 当の本人は、仲睦まじい二人に目をキラキラさせていた。
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