愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
 ストレス発散の道具を失って、ペリウィンクルの苛立ちがさらに増す。
 彼女はイライラと舌打ちでもしそうな凶悪な顔をしながら、「ヴィアベル!」と叫んだ。

「いないの⁉︎ いなくてもどうせ聞こえているんでしょ? 出てきてよ!」

 ペリウィンクルの怒声に、あからさまに嫌な顔をした妖精姿のヴィアベルが姿を現した。
 しれっとした顔が小憎たらしい。
 わかっていてそんな顔をしているのか、それとも本当に何もわかっていないのか。
 
 宙に浮かぶ生き物を、ペリウィンクルは片手でぐわしっと掴んだ。
 遠慮なく掴まれて、ヴィアベルが「ぐえ」とカエルのような声を漏らす。

「一体、どうしたと、いうのだ」

 モニュモニュとうごめいて、なんとか上半身だけ脱出したヴィアベルが、苦しそうに言った。

「一体、どうした、ですって⁈ こっちが聞きたいわよ、ばか!」
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