愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
 そうじゃないと言っているのに、責めるような物言いをされて、ペリウィンクルの怒りが頂点を超えた。

 普段ならこんなに容易く怒ったりしないのに、ヴィアベルが相手だと理性が働かない。
 さんざん甘やかされた弊害なのか、彼に対して遠慮というものがなくなっている。

 なにをしたってヴィアベルは受け入れてくれる。
 それを試すかのように、ペリウィンクルの口は止まらない。
 頭のどこかで止まれと警鐘が鳴ったが、彼女が従うことはなかった。

「ローズマリーお嬢様は……お嬢様はねぇ、婚約破棄されたいのよ」

 ペリウィンクルの口から吐き出されたとは思えない冷たい声に、ヴィアベルは反論も謝罪も忘れて黙った。
 ヴィアベルは、自身を構成する全てのものが、崩れていくような気がした。
 全身が氷のように冷たくなっていくのを感じながら、ヴィアベルは「ああこれが」と納得する。
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