愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
 妖精は基本的に一人だ。
 だが、番を見つけた妖精は一人では生きられない。
 番から無視されたり、要らないと言われたりした日には死にそうになるのだ。

 誇張ではなく本当に、死にそうだった。
 人が死ぬ原因に凍死というものがあるらしいが、妖精にもあるのだろうか。聞いたこともないが。

 そもそも、番を失っても妖精は死なない。
 シナモンの父がそうであるように、番を失った妖精を待っているのは、緩やかな死である。

 ぼんやりとそんなことを考えていたら、ペリウィンクルがイライラと「聞いているの? ヴィアベル」と聞いてきた。
 もちろん聞いている。彼女の言葉を聞き逃すことは、番と決めた時から一度だってない。

「ああ、聞いている」

 ヴィアベルはフッと笑んだ。
 ペリウィンクルは怒っているというのに、気にもしていない風を装って。
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