愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!

第40話 失意の庭師と三人の悪役令嬢

 ローズマリーの妖精を介して、妖精王の茶会は間違いであったと通達された。
 おかげで彼女と和解することができたけれど、ヴィアベルはあの日以来、本当に姿を現さなくなった。

 ペリウィンクルがどんなに呼んでも来ないし、悪夢を見た夜はいつも一人きり。
 大好きなクッキーを部屋に置いておいても、いつの間にかなくなることはなかった。

(泣いちゃダメ。泣いちゃダメなんだったら)

 悲しいと思うこと自体、おこがましいと思う。
 だというのに、ペリウィンクルの意に反して目はボタボタと水を垂れ流す。

 うじうじしすぎて、ペリウィンクルの部屋にはそろそろキノコが生えそうだ。
 ヴィアベルがいなくなって以来、ペリウィンクルは人生で最低最悪の日を更新し続けている。

「うぅぅ……ペリウィンクル・ルーの卑怯者ぉ」

 今日も今日とて陰鬱な空気をまとわせたまま、ペリウィンクルは自室へ引きこもっている。
 こんな時のペリウィンクルは、ローズマリーが声をかけても気づかない。
 だから、扉の隙間からこっそり三対の目がのぞいていたとしても、もちろん気づくことはなかった。
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