愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
 卒業までもう一カ月を切っている。
 ここに居られる時間は、あとわずかだ。

 三人の卒業試験は、順調そのもの。
 小さかった蕾は、日々ふっくらと大きくなってきている。あと二週間もすれば、早々と合格判定をもらえるだろう。

 卒業すれば、それぞれの自国へ帰ることになる。
 ローズマリーは春の国へ、サントリナは冬の国へ、セリはルジャへ。
 サントリナはニゲラと結婚した後に夏の国へ、セリはシナモンとともに秋の国へ行く予定だが、それでも誰一人同じ国にはならない。

 だから一緒に居られる時間は、もう本当に残り少ないのだ。
 ペリウィンクルには特に世話になったと思っているサントリナは、今後はハーブ知識の師匠として、そして友人として末長く付き合っていきたいと思っている。
 だから、卒業試験の合間を縫ってやって来てはお茶に誘っているのだが、ペリウィンクルが部屋から出て来た試しはない。
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