愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
「名もなき生き物です」

「え?」

「あれは、絶対に生まれてはいけない生き物です。絶対に生まれてはいけないのに、わたしは生み出してしまいました。あの子が言うからやってみたけれど、やっぱり禁忌は禁忌だった」

 わたしは禁忌を犯しました、とスヴェートは言った。

 名もなき生き物。
 それは、妖精が生まれる誕生花が生む、もう一つの存在である。

『栄養剤や肥料を与えられた誕生花から、妖精は生まれない。そこから生まれるのは、誰からも望まれない、忌まわしい存在……』

 以前、ローズマリーはそう言っていた。
 聞いた時はなんてかわいそうな生き物だろうと思ったが、対峙してみたらわかる。
 あれは絶対に生まれてはいけないものだ。
 だって、アレは明らかに──、
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