愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!

第43話 妖精の告白

 ペリウィンクルは思いたかった。
 この大掛かりな事件は、妖精たちによる壮大なドッキリだったりしやないかな、と。

(私とヴィアベルのすれ違いを乗り越えさせるために、中央の国総出で応援してくれている、とか?)

 そんなわけあるか、とペリウィンクルは自分自身で突っ込んだ。
 それが本当だったら、今この瞬間に四つ隣の部屋が破壊されるはずがないし、こんなことを考えている間にも三つ隣の部屋が破壊されるはずがない。

 今すぐにもこの部屋は破壊されようとしているのに、ヴィアベルはペリウィンクルの背後に立ったまま、大きな手のひらで自身の顔を覆ってプルプル震えている。
 いつもならおとなしく彼の髪にとまっている黄色の蝶はパタパタと忙しなく飛び回り、けなげに危険を知らせているというのに、だ。

 状況説明を求めて目の前のスヴェートに視線を送っても、彼は彼で理解が追いついていないらしく、小さな口を開けて前歯をちょこりと見せているだけ。
 ペリウィンクルは唯一同じ危機感を抱いているらしい蝶に同情の視線を投げ、それから手で顔を覆っているヴィアベルを見た。
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