愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
 耳を掴まれたまま、スヴェートはぐったりと体を弛緩させた。
 その様はいかにも狩られたばかりのウサギといった風で、ペリウィンクルはかわいそうに思う。

「あの、ヴィアベル。妖精王は本当に、スヴェートとリコリス様を生贄にしろって仰せなの?」

「ああ、そうだ。元凶に責任を取らせるのが道理である、と妖精王は言っている」

 ペリウィンクルは困ってしまった。
 このままリコリスが生贄として名もなき生き物に食べられてしまったら、ローズマリーはソレルに婚約破棄してもらえなくなる。
 今までの頑張りを無にしないためにも、ここは回避したいところだった。

「あの、さ……この後に及んで申し訳ないのだけれど……もちろん、私のわがままでしかないのはわかっているんだけど……リコリスを生贄にされるのは困るかな、って」

「なぜ?」
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