愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
 皆まで言う前に、耳をつん裂く悲鳴が上がる。
 たとえようもないおぞましい叫び声を上げながら、名もなき生き物が喉を掻き毟っていた。
 それはまるで、毒を飲まされた人のよう。
 ペリウィンクルは見てはいけないものを見てしまったような気持ちになって、思わず目を背けた。

「イタイ、イタイ、イタイ! タスケテヨ、ママァ!」

 スヴェートを食べて成長したのか、名もなき生き物の口から声らしきものが発せられる。
 母親に助けを求める声は聞いている方がおかしくなりそうなくらい必死で、ペリウィンクルは涙が出そうだった。

「あなたが、ママを食べちゃったんじゃない」

 ペリウィンクルの小さなつぶやきは、名もなき生き物の耳に入ったらしい。
 名もなき生き物は目のような器官からボタボタと液体をこぼしながら、「ヤダァ、アダァ!」とおなかを掻き毟った。
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