愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
エピローグ

第46話 茶番のはじまり

 ペリウィンクルは、落ち着かなげに着慣れないドレスのひだを弄りながら、隣の席へ座る紳士を盗み見た。

 いつもはラフな格好が多いヴィアベルだが、今宵は特別な夜ということもあって着飾っている。
 ミッドナイトネイビーのジャケットにスラックス。ベストだけ違う色になっているのが、お洒落だ。
 アクアマリン色をした髪はサイドが編み込まれ、いつもの黄色い蝶がちょこんととまっている。

(私の恋人が綺麗すぎる……)

 知らず、ペリウィンクルの口からため息が漏れる。それはもう、うっとりと。
 もう何度も恋をしているというのに、ペリウィンクルは今夜もまた、飽くことなく彼への気持ちを塗り重ねる。
 そんな彼女の手を取って唇を押し当てながら、ヴィアベルは「まもなくだな」とささやいた。

 ──茶番が、はじまる。

 今宵上演されるのは、愚かな王子の恋物語。
 妖精魔法で煌びやかに彩られた大講堂で、幕は上がった。
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