愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
 春の国の制裁を恐れてか、それともとばっちりはごめんだったのか。
 ソレルの周りに妙な空間が開く。
 おかしな空気が流れていると、彼は気づかないのだろうか。

「そして! ここにいる女性、リコリス嬢と新たに婚約を交わし、妻として受け入れることを宣言する!」

 堂々とした宣言だ。
 だが、ペリウィンクルの目にはソレルが自棄っぱちになっているようにしか見えない。

 愚かな王子を揶揄するささやきが、いっそう大きくなる。
 彼が衆目に慣れた王族で幸いだった。そうでなければ、この空気の中でこんなまねはできなかっただろう。

(私だったら、逃げ出しているところよ……)

 求めていた結果ではあるけれど、大団円とは言い難い。
 あらかじめローズマリーから聞かされていたことではあったが、前世では多少好意を抱いていたキャラだっただけに、ほんの少し良心が痛む。
 だが、現実なんてそんなものだ。仕方がない。
< 310 / 322 >

この作品をシェア

pagetop