愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
 名もなき生き物の真実は、伏せられている。
 事実は妖精たちと一部の学校関係者だけに伝えられて極秘扱い、生徒たちには「妖精魔法の暴走」と通達されていた。

 勘の良い者は事実に気がついていたかもしれないが、わざわざ言うほど馬鹿ではない。
 ただ完全に知らぬ存ぜぬを通せるほどではないらしく、この馬鹿げた茶番に付き合わされて失笑してしまうくらいには、呆れているようだった。

「なんで来ないの? あなたが言ったんじゃない! イケメンに好かれて囲まれる人生を送らせてあげるって。あれは嘘だったの? あなたが言うから、私、媚薬まで飲ませたのよ⁉︎」

「……なんだって?」

 崩れ落ちていたソレルが、やおら顔を上げる。
 美しい顔を怒りで醜く歪ませ、リコリスを睨んだ。

 美人がすごむと、より一層恐ろしさを感じる。
 リコリスも例に漏れず、ソレルの形相に悲鳴を漏らして後退った。
< 315 / 322 >

この作品をシェア

pagetop