愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!

第48話 悪役令嬢との別れ

 湖の水面を、色とりどりの花が埋め尽くす。
 これらは全て、箱庭で育てられた花たちだ。

 次にやってくる生徒たちに明け渡すため、箱庭で育てられた全ての花は摘まれることになっている。
 夜が明けたばかりの時刻、中央の国総出と言っても過言ではない大勢の妖精たちが箱庭に集結し、せっせと花を摘む姿は壮観だった。

 ペリウィンクルはこんもりと膨らんだエプロンの端を持ち、渡し舟が出る桟橋の近くである人が来るのを待っていた。
 すでにセリとサントリナとは別れを済ませ、今後も友人であることを確かめ合って、見送ったあとである。

 エプロンの端から、ふわりと一輪の花が舞い落ちる。
 小さくて、やわらかで、甘やかな香りを放つ、薄紫色のミニバラ。
 ローズマリーが大好きな花だ。
 彼女を見送るには、これが一番ふさわしい。
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