愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
 身を起こした少女は、転んでどこか痛めたのか、涙目になっている。
 うるうるとしたその目は、ローズクォーツのような色をしていた。

(へぇ、さすがヒロイン。ピンク色の目か)

 ゲームでは顔のなかったヒロインだが、現実となればそうもいかない。
 少女の顔はなかなかに、愛らしい顔立ちをしていた。そう、中の中(なかなか)、だ。

(お嬢様ほどではありません)

 ペリウィンクルは間違っても、悔し紛れに思っているわけじゃない。
 彼女は心から、ローズマリーの容姿が一番だと思っていた。

「わぁ、痛そう。キミ、大丈夫?」

 ぼんやりと様子見する二人の前で、一人の少年が現れる。
 ふわふわのピンクブロンドの髪に、まだ幼さが抜けきれていない柔らかそうな輪郭。コロンとした淡い茶色の大きな目は、愛らしいテディベアを思わせる。

(ヒイィ! お嬢様と並べたいッッ!)
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