愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
「シナモン様ぁ!」

 俯いてスカートを握りしめていたセリの耳に、女の甘い声が届いた。
 媚びるような甘ったるい声は、まるで発情期の猫のよう。
 思わず眉を寄せながら顔を上げたセリの目に飛び込んできたのは、日の光でキラキラと輝く虹色の髪をもつ少女だった。

「リコリス嬢! もう大丈夫だよ。僕が守ってあげるからね」

 シナモンの言葉で、セリはやって来た彼女が件のリコリスなのだと知った。
 入学式で見たような気はするが、転ばせるどころか話したことさえない。

 やはり勘違いだ。
 なんとか勇気を振り絞って言おうとした時、信じられないものが目に入った。

「本当ですかぁ! わぁい、うれしいな〜」

 リコリスはシナモンの腕を取ると、躊躇いもなく身を寄せた。
 まるで、恋人同士のような距離だ。目の前の出来事が信じられず、セリはただ見つめることしかできない。
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