愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
 たっぷり息を使って、十秒はかけたと思う。
 信じられない気持ちを込めに込めた「はぁぁ」だったが、ローズマリーは「譲れないもん」とそっぽを向いてしまった。

 かわいい。
 すごくかわいいが、ムカつく。いや、やっぱりかわいい。

 いくらなんでも、無理すぎる。
 ペリウィンクルはランプの魔人でもなければ、全知全能の神でもない。少しこの世界の未来を知っているだけの、しがないモブ子。ただそれだけなのである。
 
 ときめいている場合でないのは重々承知している。
 だが、ローズマリーはペリウィンクルの好みすぎた。

「そうですよね、譲れないんですもんね。じゃあ、仕方がないですよね!」

 やけくそな宣言に、ローズマリーは勝者の笑みを浮かべる。
 小悪魔のような微笑に、ペリウィンクルはたまらず「うぐぅ」と声を漏らした。

「さぁ、ペリ? セリ様の初恋を応援する手立てを考えましょう?」

 差し出された手は穢れなき天使のようなのに、地獄への招待状のように感じてしまうのは気のせいではあるまい。
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