愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
 あんな子だったら、相手にしてもらえたのだろうか。
 騎士の家に生まれ、騎士として育った男勝りなサントリナなど、女として見られないのかもしれない。

 目の前の、好意を告げてきた少女を改めて見る。
 艶々の金の髪に、コバルトブルーの目。ほっそりとした手足にキュッとした腰。特徴だけあげれば自分と同じなのに、どうしてこうも違うのだろうかと、サントリナは心底不思議でならない。
 告白されたサントリナの頭の中は、少女への羨望でいっぱいになった。

「嫌ですわ、ニゲラ様ったら」

「リコリスはよく転ぶからな。もうけがをしないように、俺がそばにいてやろう」

 不意に聞こえてきた、今一番聞きたくなかった会話に、サントリナの肩が震える。
 見上げれば、二階の渡り廊下をニゲラとリコリスが腕を組んで歩いていくのが見えた。
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