聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!
1 憧れのお兄ちゃん −美桜side
小学生の時、近所に住んでいたお兄ちゃんが大好きだった。
優しくて、笑顔が柔らかくて、温かい。
勉強はいつもお兄ちゃんから教えてもらっていた。
「お兄ちゃん大好き!!」
私はいつもそう伝えていた。
するとお兄ちゃんは、私の大好きな笑顔でこう言うんだ。
「ありがとう、美桜」
『大好き』っていう私の言葉には、
『ありがとう』って言葉しか返って来ない。
『俺も好きだよ』って返してもらえることを、いつもちょっとだけ期待してた。
でも返ってくるのはいつも同じ『ありがとう』。
ちょっとだけ切ない気持ちになるけど、それでもいい。
私は、お兄ちゃんの傍に居るだけで幸せなんだから。