聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!
「よ、レースちゃん。」
トントン、と後ろから肩を叩かれて美桜は振り向いた。
夏樹と矢嶋が、ユニフォームを着て立っていた。矢嶋は後ろで小さく手をあげている。
美桜は挨拶しようとしたが、夏樹を見て声を上げた。
「先輩!どうしたんですか、その髪!!」
夏樹は、チャームポイントである茶髪にメッシュではなく、黒髪になって雰囲気が変わっていた。
「大会の時はいつも黒髪なんだよ。」
夏樹はそう言うと、まだ驚いている美桜を見て「どう?惚れ直した?」と言った。
「べ、別にっ。惚れてるなんて言ってませんけど!」
美桜は『かっこいい』と心の中で呟いていた恥ずかしさを隠すために、思わず憎まれ口を叩く。
「つれないなあ。ちょっと褒めてくれたっていいのに。」
夏樹がそう言ってる間に、矢嶋は菜々に近寄り、二人で話し始めた。