聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!


「ありがとうな。来てくれて。」


そう言う夏樹が、なんともキラキラして見えて、美桜は思わずドキドキしていた。


ーー好きかもって思っただけで、こんなに見え方が変わるものなのかな…。黒髪も似合うなあ。


ぼうっとして夏樹を見つめる美桜の前で、夏樹はぶんぶんと手を振る。


「おーい、レースちゃん?」


美桜がハッとして「すみません、つい…」と言うと、夏樹は美桜の顔を覗き込みながら言った。


「つい、何?もしかして見とれてた?」


ニヤッと笑う夏樹に、美桜は慌てて「ち、違います!」と反論してしまった。


「素直じゃないなあ」と言いながら笑う夏樹から目を逸らし、美桜は紅潮し始めた頬を抑えていた。


「俺、11時からの第5レースに出るから。その後、ちょっと二人で話せない?」


夏樹がそう言うと、美桜はチラッと夏樹を見て「わ、わかりました。」と返事をした。


「サンキュ!じゃあ、終わったらまたラインで連絡する。応援してな。」


そう言うと、夏樹は矢嶋に声を掛けて、選手達の待合場所に戻っていった。

< 124 / 305 >

この作品をシェア

pagetop