聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!
11時になり、レースがスタートした。
今回は5000メートルのレース。
さすがは全国大会3位の実力者。
夏樹はレースをリードするように、次の選手を引き寄せずに走っている。
走っている夏樹の横顔を見るのは初めてだ。
いつも見ない、真剣な表情。
夏樹の体の動きに合わせて跳ねる黒髪。
ユニフォームから伸びる、長くて逞しい脚と腕。
夏樹の全部がキラキラして見えた。
「…かっこいいね、堀越先輩。」
菜々がそう呟いて、美桜ににっこり笑いかける。
美桜はしばらくして「…うん。かっこいい。」と呟いた。