聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!
――私の存在に救われた?…何があったんだろ。
「ま、その頃の詳しいことはまた後日ってことで、とりあえず…」
そう言うと夏樹は、少し首を傾げるようにして美桜に尋ねる。
「俺の彼女になってくれるってことで、いい?」
「…はい。」
彼女。
改めてそう言われるとなんだか恥ずかしい。
頬を紅く染める美桜を、夏樹は愛おしそうに見つめる。
美桜の髪にゆっくり指を差し込み、髪をほどく。
大切なものを扱うように。
何回も、何回も。
「…やっと振り向いてくれた。……嬉しい。」
夏樹はそう呟くと、柔らかく微笑んだ。
そして。
真剣な顔になって美桜を見つめた夏樹の顔が、美桜の顔に近づく…。