聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!


「橋本ちゃん?おーい」


菜々は自分の名前を呼ぶ声で、ハッと我に返った。


矢嶋博隆。菜々の2コ上の先輩だ。


リュックを背負い下校するところのようだが、どうやら、何度か声を掛けてくれていたようだ。


「矢嶋先輩!お疲れ様です。すみません、気づかなくて…」


菜々がオロオロしながらそう謝ると、矢嶋は「めちゃめちゃ集中してたね。」と笑いながら言った。


「そんなに真剣に見つめちゃって。もしかして、好きな人でも見てた?」


「へ!?あっ…ええっと…」


慌てる菜々に、矢嶋はふんわり笑うと「いるんだな。そしてそれはサッカー部か。」と見事に言い当てた。

< 164 / 305 >

この作品をシェア

pagetop