聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!
「…堀越先輩、人気あるみたいだね。」
菜々もグラウンドに目をやりながら、呟いた。
「だねぇ。評価は人それぞれだろうけど…。」
「美桜ちゃん、どうするの?堀越先輩に告白したりとか…」
「えぇ!?」
美桜は驚きながら手をブンブンと振った。
「ないない!だって、昔のイメージとまるで違うし!」
「そうなの?絶対に告白するって言ってたから、頑張るのかと思ったよ。」
「いやぁ~、今やデリカシーない男子になってしまってるしなぁ、堀越先輩――」
そこまで美桜が言った時、「危ないっ!」と声がした。
美桜と菜々が振り返った途端―――
バシッ
「痛っ!」
菜々の右手にサッカーボールが当たって跳ね上がった。顔をかばおうと咄嗟にかざした右手にボールが思いっきり当たったようだ。
「ななちん!大丈夫!?」
右手を抱えてしゃがみ込む菜々に、美桜が声をかける。
そこへ、サッカー部の部員が駆け寄ってきた。