聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!
部活の練習が終わり、皆が帰った後の部室。
菜々は、箒を持って部室内を軽く掃除していた。
「最近、部室がいつも綺麗だなって思ってたら、橋本が掃除してくれてたんだな。」
その声に、はっとして振り向くと、先に帰ったはずの相良がドアのところに立っていた。
「相良君!どうしたの?」
「ロッカーに忘れ物。」
そう言うと、自分のロッカーの扉を開け、取り出した袋をカバンに詰め込んだ。
「橋本、マネージャーの仕事で気負いすぎてない?あんまり無理しないでね。」
相良にそう言われ、菜々はブンブンと頭を振る。
「全然!むしろマネージャーの仕事してからの方が毎日楽しくて。メリハリつくというか、勉強も短時間で集中できるようになったし、引き受けて良かったなって思ってるよ。掃除も、好きでやってるだけし。」
「そっか。なら良かった。」
相良はホッとした様子で、柔らかく微笑んだ。