聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!
「…まさに好青年ってカンジだな。」
夏樹が相良の背中を見ながらボソッと呟いた。
美桜も隣で「そうそう」と言って同意している。
「相良君、女子からの人気も高いみたいなんだ。この前先輩達が、相良君かっこいいっていう話してるの、聞いちゃったんだよね。」
「ふぅん…。橋本ちゃんはああいうのがタイプなの?結構、話弾んでたみたいだし?」
夏樹にそう言われ、菜々は分かりやすいくらいに真っ赤になった。
「そそそそうですか!?たたたしかに、相良君は、はは話しやすいですけど、わた、私のタ、タイプ…だなんてっ…」
慌てる菜々を見て、夏樹はフッと笑うと「ごめんごめん、じょーだん。」と言って話を終わらせた。
「じゃ、そろそろ電車来そうだし、俺行くわ。じゃあな、美桜。あ、一応あのこと橋本ちゃんに聞いといて。」
「うん、わかった!じゃあね。」
美桜が夏樹に手を振る横で、菜々はペコっとお辞儀をした。
「美桜ちゃん。あのことって、何?」
並んで改札を通った後に菜々が尋ねると、美桜はそうそう、と言って、話し出した。