聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!
「おぉ…。なかなか速そうですね。」
「ジェットコースターとか行けるんなら全然ヨユーだと思うけど。」
「ジェットコースターはがっちりガードされてるから、あんまりスピードなければまだ大丈夫なんですけど…。あのスライダーは…ほぼ垂直だし…落ちそうで怖いなぁ。」
菜々が不安気に言うと、矢嶋は、あははっと笑ってから「じゃあ落ちそうになったら支えるよ」と言った。
――優しいなぁ、矢嶋先輩。
スライダーの入り口に向かう階段を、矢嶋の背中を見ながら登る。
広い背中。
後ろ姿だけ見ても、落ち着いた、頼りがいのある雰囲気が漂っている。
「あの、聞いてもいいですか?」
「ん?何?」
美桜と夏樹がスライダーの入り口で出発の準備を整えてる間、菜々はふと思ったことを聞いてみた。