聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!
――なんだか、今日は矢嶋先輩に励まされた1日だったなあ。
いつも自分に自信が持てない菜々は、何をするにも大抵周りに合わせていた。
まさに、今日の流れるプールのように。
いつも、流されるまま、生きてきた。
勉強だって、親や先生、周りの大人達から「しないより、した方がいい」と言われたから、してきた。
部活のマネージャーだって、相良に誘われなければ、一生務めることはなかっただろう。
相良とのことだって、2人で話したいとか、ましてデートしたいなんて、思ったこともなかった。
『もっとこう、欲を出していいと思うよ?』
矢嶋に言われた言葉を思い出す。
欲。