聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!


自分はこれから先、どうなりたいのか。



勉強をした先、将来はどうなりたい?


相良と仲良くなって、その先、どうなりたい?


『欲』を出し、自ら行動に移さなければ、自分が納得できる未来は掴めない。


しかし、菜々自身、自分が納得できる未来とは何なのか、よく分からなかった。




でも1つだけ、今日は珍しく欲が出た。



『もう少し繋いでたかったな』



ほんの一瞬だったが、矢嶋が手を取って引っ張ってくれたあの瞬間、素直にそう思った。


ふと、菜々は自分の手を見つめ、矢嶋の手の大きさを思い出す。


菜々の手を包み込んだ大きな手は、少し骨ばっていて、男らしさが感じられた。


チラッと隣にいる矢嶋に目を向け、今度は矢嶋の手を見つめた。


矢嶋は、胸の前で腕組したまま眠っている。頭はまだ、菜々に預けたままだ。


所々、骨が浮き出ている手。


…ドキドキした。

< 197 / 305 >

この作品をシェア

pagetop