聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!
単に自分がちょろいだけなのかもしれない。ほんの一瞬、手を繋いだだけで、こんなにも矢嶋のことを意識してしまうなんて。
でも今日は、矢嶋の一言一言が、菜々の心に残った。
『じゃあ落ちそうになったら支えるよ』
『俺は、橋本ちゃんと一緒にまわりたいんだけど、橋本ちゃんは嫌?』
『たくさん話してさ、過ごす時間が長くなれば、橋本ちゃんの良さに絶対気づくはずだから、頑張ってみたら?」
『まぁ…確かに、ぱっと目につくくらい、可愛いからな…橋本ちゃんは。』
最後の言葉を思い出した途端、また頬に熱が集まるのを感じた。
――矢嶋先輩、私に自信を持たせようとしてくれてるんだよね。すごいな。先輩の言葉に、私、こんなにも励まされてる。
――頑張ってみよう。
――相良君と、友達以上になれるように。