聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!


単に自分がちょろいだけなのかもしれない。ほんの一瞬、手を繋いだだけで、こんなにも矢嶋のことを意識してしまうなんて。


でも今日は、矢嶋の一言一言が、菜々の心に残った。


『じゃあ落ちそうになったら支えるよ』


『俺は、橋本ちゃんと一緒にまわりたいんだけど、橋本ちゃんは嫌?』


『たくさん話してさ、過ごす時間が長くなれば、橋本ちゃんの良さに絶対気づくはずだから、頑張ってみたら?」


『まぁ…確かに、ぱっと目につくくらい、可愛いからな…橋本ちゃんは。』


最後の言葉を思い出した途端、また頬に熱が集まるのを感じた。


――矢嶋先輩、私に自信を持たせようとしてくれてるんだよね。すごいな。先輩の言葉に、私、こんなにも励まされてる。


――頑張ってみよう。


――相良君と、友達以上になれるように。

< 198 / 305 >

この作品をシェア

pagetop