聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!
でも、私が4年生になる前、お兄ちゃんが突然引っ越すことになった。
私は引越し当日、お兄ちゃんの家の前でいっぱい泣いた。
「な……なんで…い、嫌だよ……い、行か、行かないで……」
嗚咽を漏らしながら私は涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしながら必死で訴えた。
泣きじゃくる私を目の前にして、どうしたらいいのか困った様子のお兄ちゃん。
そんな困った顔をさせたいわけじゃないのに。
でも寂しいの。
笑って欲しいの。
行かないで欲しいの。
涙で言葉がつっかえて、全然言いたいことが言えない。
「…美桜、ありがとう。また会えるといいね」
そう言って、にっこり笑ってくれたけど、その笑顔はどこか寂しそうだった。
車に乗り込んで、手を振ってくれるお兄ちゃんに、私は泣きながら手を振り返した。
さようなら、お兄ちゃん。
また会えたら絶対言うから。
「ずっとずっと、大好きでした」って――