聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!
「大丈夫じゃないかな。骨折まではしてなさそうよ。でもあまりにもひどい痛みが続くようだったら、病院行ったほうがいいわね。」
菜々の指の状態を見て、そう保健師から言われ、とりあえず3人はホッとした。
「よかったぁ。骨折ではなさそうで。」
必要な処置をしてもらい、保健室を後にしてから、菜々がそう言った。
「ホントごめんな、橋本。俺がちゃんとボール取れなかったから…。」
シュン、と落ち込む相良の様子を見て、菜々は慌てた様子で言った。
「い、いいのいいの!私がボーっとして歩いてたのが悪いんだし…」
「ボーっとも何も、後ろから来るボールだから気付けるわけないよ。」
「そ、そうかもしれないけど…」
菜々が言葉を濁すと、相良は柔らかく笑って言った。
「何か不便なことあったら遠慮なく言っていいからな。何かお詫びしないと俺も気が済まないし。」
そう言うと、相良は「じゃあ俺、練習戻るわ。2人共、気をつけて帰れよ!」と言って走ってグラウンドへ戻っていった。