聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!
「爽やかだなぁ、相良くん。ザ・好青年って感じ。」
相良の姿が、見えなくなってから美桜が正直な感想を述べた。
「そうだね。優しかったしね。」
菜々は右手を擦りながらそう言った。
「相良くん、ななちんの手、握ってたね。」
美桜がそう言うと、菜々はボンッと音がしそうなくらい一気に顔を真っ赤にさせ、わかりやすく動揺した。
「そそそそそうだね!!た、たぶん、急いで保健室につ、連れて行ってくれようとしたのかなぁ!?」
そうかもねぇ、と言いながら、美桜は慌てる親友の様子を見て、二ヤリとした。
「え、もしかして相良くんって、ななちんのタイプなの?」
ストレートに質問した美桜に向かって、菜々は左手を顔の前でブンブンと振りながら否定した。
「ち、違う違う!世間一般的にかっこいいと言われる人なんだろうなとは思うけど、そんな滅相もない!」
そう言う菜々の顔は、耳まで真っ赤だ。
ふうん?と美桜が言った後、2人は無言のまま靴箱に向かった。