聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!
「大丈夫だった?神崎先輩、体調悪いの?」
心配そうな顔で相良が尋ねる。
「うん、大丈夫だとは思うよ。たぶん、寝不足じゃないかな。星原先輩が見とくって言ってくれたけど、2人きりにして大丈夫だったかな?」
「2人きり?…まぁ、大丈夫とは思うけど、やっぱり…」
相良が一旦周りの目を気にして言葉を途切れさせたが、手を当てた口元を、菜々の耳元に寄せ、小声で言葉を続けた。
「…あの2人って、付き合ってるんじゃね?」
相良の息が、菜々の耳にかかる。
――ほっぺた熱い…。この暑さのせいだと思って欲しい…。
「神崎先輩が言ってたけど、付き合ってはないみたいだよ。」
菜々は頬を赤く染めたまま、ヒソヒソ声でそう返した。相良は驚いたようで目を丸くし「マジか」と小声で呟いた。