聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!


「まぁ…そうだな。たしかに。悪かったよ。」


そう言って謝る人もいたが、まだ色々と聞き足りない部員もいるようだ。


「でもさぁ、橋本ちゃんがお前のこと好きで、マネージャー引き受けた可能性もあるだろ?」


「確かに!それ、ありうるな。」


「橋本はそんなやつじゃないですよ。他の女子とは違う。」


相良は迷いのない口調で、菜々を擁護する。


その言葉を聞いて、菜々は心臓がキュッと掴まれたような気分になった。


『マネージャーになれば、相良君がサッカーする姿をたくさん見れるかも』


そんな不純な動機が少しでもあったことを、菜々は恥ずかしく思えてきた。


――今日は部室の掃除、やめよ。


そう思い、部室のドアからこっそり離れようとした、その時。


信じられない言葉が聞こえてきた。

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