聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!


「そんなヤツに橋本ちゃんはもったいない。他に橋本ちゃんの良さをわかって、大事にしてくれる人を見つけた方がいいと思う。」


――私を大事にしてくれる人を見つける…。


考えてもみなかった。


「ま、すぐに気持ちの整理するのも難しいだろうからさ、とりあえず今日は帰りな。駅まで送るよ。」


そう言うと、矢嶋は立ち上がって鍵を開け、部室の外に出た。


「あ、あのっ!」


菜々が立ち上がってそう言うと、矢嶋が「ん?」と言って振り返った。


「…ありがとうございます。話聞いてくださって。」


菜々がそう言うと、矢嶋はフッと笑って「どういたしまして。」と言った。表情も口調も、穏やかないつもの矢嶋に戻っていた。

< 234 / 305 >

この作品をシェア

pagetop