聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!
菜々も帰る準備を済ませ、矢嶋と一緒に駅まで向かう。
「あ、そうそう。見てこれ。」
そう言うと、矢嶋は手に持っていた袋の中からトロフィーを取り出した。
「インターハイ、優勝しました〜!今日はこれを持って帰るために、学校に来たんだ。」
「え!?すごい!!おめでとうございます!」
「ありがとう。しかも自己ベスト更新した。」
「すごーい!」
菜々が隣で拍手をするのを見て、矢嶋は嬉しそうにはにかんだ。
「ネット記事にも載ったよ。時間あったら見てみてよ、俺の勇姿。」
「見ます見ます!!すごいなぁ。」
菜々が自分のことのように喜んでいると、矢嶋が、袋にトロフィーをしまいながら「これで心置きなく受験に専念できるよ」と言った。
受験。
「矢嶋先輩は、どこの大学受けるんですか?」
「県内と、県外と、いくつか受けるよ。」
「そう…なんですね。」