聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!
「ん?あぁ、そうそう。俺がそのお兄ちゃん。教室まで来てくれた時に『人違いですー』とか言うから、違うのかよって思ったけど、やっぱりお前だったんだな。」
美桜は夏樹の言葉を聞いて、ガックリと項垂れた。
――せ、聖人君子のお兄ちゃんイメージが…。
受け入れがたい真実。
だが、受け入れざるを得ない。
――つ、つらっ……。
項垂れたままの美桜を余所に、夏樹はすっかり思い出に浸っている。
「懐かしいよなぁ。すっかり大きくなったな。」
ポンポンっと頭を叩かれたが、美桜は魂が抜けたようにそのまま動かなかった。
そんな美桜を見て、夏樹は「あ。」と言うと話を元に戻した。
「話が長くなったな。レースちゃんも自主勉したいんでしょ?俺と相席したら?」
そう言って、夏樹は教科書とノートが広げてある机を指さした。美桜がやっと顔を上げ夏樹の指差す方を見ると、4人がけのテーブルで反対側の席が空いている様子だった。