聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!
「…菜々、あれから矢嶋先輩と連絡とったの?」
「ううん、連絡してない。」
「そうなんだ…。」
矢嶋が、菜々と撮った写真を送ってくれた後、菜々は気まずくなって連絡できずにいた。
「それに、メッセージ送るっていっても、なんて送ればいいか…。」
「まぁ…そうだよねぇ。」
そう言うと、里帆は遠慮がちに言葉を続けた。
「矢嶋先輩のこと、菜々はどう思ってるの?」
「うーん…いい先輩だとは思ってるんだけどね…。」
「好きには、なれない感じ?」
「うーん…。里帆ちゃん。」
「ん?」
「里帆ちゃんはさ、好きなんだよね?バスケ部の先輩のこと。加治先輩だっけ。」
「うん。好き。」
「付き合いたいって思う?」
「え?うーん…。どうなんだろうね。付き合うって、手繋ぎたいとか、デートしたいとか、そういうことなんだろうけど、私はちょっと違うかも。」
「そうなの?」
うん、と言って答えた里帆は、銀杏の木を眺めたまま、言葉を選びながら話を続けた。
「例えば、美桜が堀越先輩のことを好きで付き合ってるのと、私が加治先輩のこと好きなのは違うかなー。ほら、美桜と堀越先輩って、2人で一緒にいたいから付き合ってるって雰囲気あるでしょ?私は、そこまで望んでないというか。…まぁ、憧れに近い感じ?」