聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!

――矢嶋先輩!?


突然の再会に、菜々は1人、あたふたして物陰からこっそり様子を伺う。


矢嶋は、服をめくり、悩んでいる様子だった。


――先輩、髪切ったんだ。


夏休みに会った時よりも、整った短髪スタイル。


好きと自覚してから会うのが初めてだからか、心拍数が上がる。


――声、掛けていいのかな。メッセージも読んでもらえてないのに。


話したい。でも、怖い。


受験シーズンだから、あまりしつこくメッセージを送るのも邪魔になるからと、あれから何もできなかった。


でもいざ本人を目の前で見ると、話したくてしょうがなかった。


――今話さなかったら、ずっと話せないままかも。…そんなの嫌。


菜々は意を決し、矢嶋と話すために向かい側の店に向かおうとした。


すると。

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