聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!


――なんだ。矢嶋先輩、彼女できたんだ。だからメッセージも読んでもらえなかったんだ。


涙を拭い、菜々は近くにあった鏡を覗き込んで泣き顔になってないかチェックした。


そして、3人のもとへ戻る。


「あ!ななちん、いたいた。どう?決まった?」


美桜に声をかけられ、菜々は平然を装いながら頭を振った。


「ごめん、決められなかったの。上の階のお店に行ってみてもいい?いつも行く雑貨屋さんがあるから。」


「いいね、いこ!私も決められなかった〜。」


そう返してくれた芽唯の言葉に、菜々はホッとしながら4人で店を出た。


――矢嶋先輩と、どうか会いませんように。


もしばったり会おうものなら、間違いなく泣き出してしまうだろう。


それを想像しただけで、泣けてきた。


涙をグッと堪え、友人達について歩く。


上の階に移動し、ウィンドウショッピングをしながらプレゼントを探す。


ようやく、よさげな美容グッズを見つけ、プレゼント用に包んでもらった。


買い物が済んだ4人は、ランチをする店を探した。


「ひゃー、どこも並んでるー!」


「クリスマス近いしねー。ちょうどお昼時だし、仕方ないよ。」


そんな会話をしながら、ようやく店を決めた4人は、列に並んで順番を待つことにした。


しばらく話をしていると、見知った顔の人が角を曲がってきた。

< 282 / 305 >

この作品をシェア

pagetop