聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!
「ホントに大丈夫?無理してない?」
その言葉に、菜々は「うん!」と笑顔で返した。
「大丈夫!ちゃんと自分の中で答えを出せてるから。むしろ、長続きするように、応援したい気持ちだよ。」
にっこり微笑む菜々を見て、美桜は「そっか」と言ってホッとした表情になった。
――ホント、応援したい。相良君のこと。矢嶋先輩を見かけた時のさっきの気持ちとは大違い。
相良を応援したいと思った気持ちは『憧れ』。
彼女がいると分かってから、結局1度も涙は出なかった。
対して、矢嶋が彼女と一緒にいるのは嫌だと思った気持ちは『好き』。
彼女の姿を見かけた瞬間、涙が溢れた。
ようやく、自分の気持ちの整理ができたというのに。
気付いた時にはもう、手遅れで…。
自分じゃない、他の人と幸せそうにしていて…。
美桜達がワイワイと喋る傍ら、菜々はキュッと手を握って涙を堪えた。
――矢嶋先輩へのこの気持ち、どうしたら消せるんだろう。