聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!
「神崎先輩は、星原先輩にチョコあげるんですか?」
少し冷やし固めたチョコを、手のひらで丸くし、ココアパウダーをつけながら、菜々が尋ねる。
神崎は次のチョコを湯煎で溶かしながら「うん」と答えた。
「先輩、第一志望の大学に合格したらしくて。だからお祝いがてらあげることにしたよ。」
「すごい!おめでとうございます。」
「ありがとう!ってか、合格したの、私じゃないけどね!伝えとく。」
神崎が笑いながら言った。
「橋本ちゃんは、誰かにあげないの?例えば、相良君とか…?」
神崎がニヤニヤしながらそう言ったが、菜々は静かに頭を振った。
「相良君は、好きな人じゃないです。…っていうことに、ちょっと前に気付きました。相良君は、ただの仲のいいクラスメイトです。」
驚いた神崎の、チョコを混ぜる手が止まった。
菜々も、手元のチョコが一通りトリュフチョコになったところで手を止めた。
「そうなんだ!?じゃあ、今は特に誰も好きな人はいないの?」
「好きな人…」