聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!
「…どうぞ。」
窓越しに、菜々は矢嶋にチョコを差し出した。
「やった。いただきます。」
そう言うと、矢嶋はチョコを1つ取って食べた。
「うまっ!元気出るわー。ありがとう。でも、1つで十分だよ。お裾分け、どーも。」
「え?美味しくなかったですか?せっかくなので、もう1つ…」
神崎が離れたところからそう言うと、矢嶋がにっこり笑って言った。
「いや、マジで美味しかったよ。でもさ…」
そう言うと、神崎から菜々に視線を移し、泣き出しそうな顔の菜々を見つめながら言葉を続けた。
「これって義理チョコのお裾分けでしょ?好きな子からは本命チョコもらわないと意味ないからさ。」
そう言うと、矢嶋は「お邪魔しました。」と言って菜々の頭をポンポンと叩くと、そのまま去っていった。