聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!
時計が18時を回ろうとしたところで、見回りの先生が声をかけにきた。
「そろそろ自習室閉めるぞー。帰宅準備始めろー」
なんとか一通り復習を終えた美桜は、机に出していたものをバッグに入れ、立ち上がった。
「おい、レースちゃ――」
「夏樹ー!ここにいたんだぁ。一緒に帰ろー」
美桜に声をかけようとした夏樹のもとに、部活動バッグを背負った女子生徒が駆け寄ってきた。
「みなみ…」
「チアの練習終わったから、一緒に帰ろうと思って。ね、行こ!」
――ほ、細い…。
まっすぐな腕と脚、サラサラの黒髪ロングに大きな瞳。
誰が見ても美女と評価されるであろう、みなみと呼ばれた女子は、明らかに夏樹を好きな様子だった。
対して、夏樹はなんだかかったるそうな様子だ。
「一緒にっつったって、ほとんど方向違うだろ。また俺が送らないといけなくなる――」
「送ってくれるんだー♡やっぱ夏樹は優しいねぇ」
そう言うと、みなみは夏樹の腕に自分の腕をしっかりと巻き付けた。