聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!


時計が18時を回ろうとしたところで、見回りの先生が声をかけにきた。


「そろそろ自習室閉めるぞー。帰宅準備始めろー」


なんとか一通り復習を終えた美桜は、机に出していたものをバッグに入れ、立ち上がった。


「おい、レースちゃ――」


「夏樹ー!ここにいたんだぁ。一緒に帰ろー」


美桜に声をかけようとした夏樹のもとに、部活動バッグを背負った女子生徒が駆け寄ってきた。


「みなみ…」


「チアの練習終わったから、一緒に帰ろうと思って。ね、行こ!」


――ほ、細い…。


まっすぐな腕と脚、サラサラの黒髪ロングに大きな瞳。


誰が見ても美女と評価されるであろう、みなみと呼ばれた女子は、明らかに夏樹を好きな様子だった。


対して、夏樹はなんだかかったるそうな様子だ。


「一緒にっつったって、ほとんど方向違うだろ。また俺が送らないといけなくなる――」


「送ってくれるんだー♡やっぱ夏樹は優しいねぇ」


そう言うと、みなみは夏樹の腕に自分の腕をしっかりと巻き付けた。

< 29 / 305 >

この作品をシェア

pagetop