聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!
「橋本ちゃん…!!」
ぼうっと立ったままの菜々に、神崎が駆け寄る。
「ちょっとちょっと!今のって、インターハイで優勝した矢嶋先輩だよね!?橋本ちゃんのこと、好きですオーラ全開だったけど、知り合いなの!?」
まだ呆然としている菜々を揺さぶりながら、神崎は興奮気味で話している。
「どうなの、橋本ちゃん!?橋本ちゃんは矢嶋先輩のことどう思ってーー」
「嫌われてるかと思ったのに…」
そう言うと、菜々はその場にしゃがみこんだ。
涙が止まらない。
「え!?どうしたの?何があったの?」
「それが…」
菜々は、泣きながら神崎に話をした。
矢嶋に花火大会の時に告白されたこと。
その時は気持ちの整理ができておらず、フることになってしまったこと。
後日、矢嶋のことが好きと気付いて、会いたいとメッセージを送ったのに、今も読んでもらえていないこと。
そして
クリスマスの前に、矢嶋が女性と仲よさげに買い物をしていたこと。
ずっと胸の中に閉じ込めていた事実。
誰にも話さないで抱え込んでいるうちに、菜々の中で大きく膨らんで、心の重荷になっていた。
神崎に話を聞いてもらうことで、心が少し軽くなった気がした。