聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!
桜の花弁が舞う、澄んだ青空の下。
美桜は目をキラキラさせながら、風を受けて膨らむ垂れ幕を見つめた。
「もし…もし堀越先輩が、あのお兄ちゃんだったとしたら、私絶対に告白する!!」
第一志望の高校に仲良しの友達と一緒に今日から登校できるという事実も幸せだが、
初恋の人が同じ高校に通っていたとしたら、夢のような高校生活になること間違いなしだ。
「よぉし!!絶対に幸せな高校生活にしてやるぅぅ!!」
そう言って拳を突き上げる美桜の横を、男子生徒が通ったかと思うと「おい」と声をかけてきた。
「はいっ!!!」
先ほどの気合いからの勢いのまま返事をしたせいで、無駄に大きな声が出てしまった。
声をかけてきた男子生徒は、緩めスパイラルの茶髪に金メッシュを入れてブレザーを少し着崩した…まぁ言ってしまえば、いかにもチャラ男といった出で立ちだった。
メッシュ入りのその男は、美桜の腰を指さしながら涼しい顔でこう言った。